Curation of luxury shoes.

世界には様々なクリエーターや職人がいます。
Brusque Houseは後世に継承されるべき
モノ作りの担い手にスポットをあて
作者一人一人のモノづくりのフィロソフィーを紐解きながら
伝統的技法の奥ゆかしさや、
繊細なディテールに隠されたストーリーを
靴を愛する皆様にご紹介出来たらと考えています。

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Cloudy Paletteのストーリー

それは私が革に色彩を施す職人としての修練をはじめた、まだ駆け出しの頃でした。当時新米の色つけ職人として染色技法を学んでいた私は、ひと通りの技法をマスターし、いよいよ実際にブティックで販売された靴やバッグの色付けを任される様になってきたのです。新米にも拘らず、カラーリングを任されるや否や先輩方のレシピを踏襲するだけでは飽き足らなくなり、独自にコントラストを追求する様になりました。本来は緩やかなトーンカーブを描く事を特徴としている格調高い色彩表現を旨とする手法だったのですが、私はそこに学生時代から敬愛しているポロックやロスコーの様なタッチを持たせる事で「アブストラクト・アートを鑑賞する様な感覚」を完成品に付与したいと考えていたのです。私が試みた抽象画を鑑賞する様な感覚の色付けは、すぐに買い手の方も見つかり、一見好調な様にも見受けられました。

しかし、出だしの良いケースほど、後々の反動があると言えるのではないでしょうか。様々な商品にその手法を適用していくうちに、何処かしらに翳りが見え始めたのです。最初はアートを感じ取れる染色手法ということで、意気揚々と作品を作っていったのですが、先輩方の色付けにある「奥ゆかしさ」が無い事に気付きました。何故私がそう感じたのかと云うと、偶然さるオーナーの方によって使い込まれた靴を手に取った時に、色彩に奥行きが無いと感じたからでした。お分りかもしれませんが、奥行きと云う概念は手前の景色大きく、遠くの景色を小さく描く事で成立します。その遠近のバイアスが上手くかかっていない、未完成なカラーリングに見えてしまったのです。

そんな愕然とした状況で、アトリエで最もベテランのカラリストに突如として言われた言葉があります。彼は私を外に連れ出すと空を見上げながら「おまえの色付けには色の階段がない。見ろ、雲だって階段状になって奥行きを形成しているんだぞ」と言い放ったのです。その日の空はどこまでも高く、青いキャンバスの上に無数の階層を成した雲の層が幾重にも折り重なっていました。あの出来事からかなりの時間が経過しました。その後より幅広く素材のキャンバスを得る為に試行錯誤を繰り返しながら、私自身「色彩の階段」を駆け上がるべく試行錯誤を重ね、様々な革を買い漁っては実に多種多用なカラーリングをさせて頂きました。靴やバッグに限らず、より広範なプロダクトを素材から練り上げる様な事が出来たのは、雲の向こうの、そのまた向こうにある遠くのグラデーションを皮革の表面で絵に出来る様にと、日々空を見上げる様になったお陰かなと感謝しております。

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